第20号 社長と一緒に会社のことを真剣に考える社員を増やす

━━ <社長と一緒に会社のことを真剣に考える社員を増やす> ━━━
発行:株式会社スコラ・コンサルト 中堅・中小企業サポートグループ
      【経営者.com】⇒ 
http://www.keieisha.com

─────────■第20号 2008.04.11■───────────

「経営者.com」より、メールニュースをお届けします。
今回のコラムは、プロセスデザイナー・若山修が「売上か?理想か?」
という二律背反に頭を悩ませていた社長と幹部の事例について書いて
います。

「経営者.com」は、「社員を主役にする新しいトップダウンの形」を
目指している経営者の ために、5名のプロセスデザイナー(組織風
土改革の専門家)がお役に立つ情報をお届けしてまいります。

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        △▼ 売上か? 理想か? ▼△
             
                プロセスデザイナー 若山 修
【プロフィール】⇒
http://www.keieisha.com/category/1155202.html
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■きれいごとでは済まない理想

 ある小売業の社長と幹部は、頭を悩ませていました。理想とするお店
の姿と、自分たちが日々売上と利益を追求している姿とがどうしても食
い違ってしまうというのです。この会社はおもちゃの中古品の販売を主
事業としており、従業員数は40人ほど。経営理念は「人と人との絆を創
る場の提供」、毎朝みんなで唱和しています。

「私たちはお店のコンセプトを『お客様が楽しむ場所』だと思っていま
 す」
「とても素敵なコンセプトですね」
「はい・・・。ですが・・・」

 彼らが悩んでいるのは、子どもたちが遊べる場所「プレイコーナー」
のことでした。低単価の商品を扱う彼らのお店では、在庫量と売上はか
なりの相関関係があります。つまり、コンセプトに従えば、プレイコー
ナーはなるべく広くしたい。しかし、プレイコーナーを狭くして、その
ぶん在庫を置くことで売上は上がる。そこにジレンマを感じていたので
した。

「現実には、プレイコーナーはだんだん小さくなっているんです」

 目の前の売上と日々格闘している中で、お店の有り様は理想とするお
店の姿とは違ってきていたのです。

■オフサイトミーティングをやってみよう

「この話は今まで会議で何度も取り上げてきました。でも、結局これだ
という結論は出ないので、毎回『とりあえず今のままで仕方ないよね』
で終わってきたんです」

 そんなとき、知り合いを通じて「考える力を伸ばし、今までにはない
知恵を生み出すことのできるオフサイトミーティング」という話し合い
のスタイルを知り、私たちに声をかけてきたのでした。普段は表面的な
議論で終わりにしているようなテーマ、またすぐには答えの出ない根本
的な問いなどを、時間をかけてじっくりと深めていくのはオフサイトミ
ーティングの特徴のひとつです。また、すぐに答えや打ち手を出そうと
せずに、「それはなぜなんだろう?」と問題を掘り下げたり、「問題は
それだけだろうか?」と視野を広げたりすることも大切にしています。

 オフサイトミーティングで重要なのは「お互いに聴きあう」こと。相
手の言葉をじっくり聴き、そこに自分の考えを未整理でもいいからぶつ
けてみる、それを聴いた別の仲間がまた反応する・・・。そんなプロセ
スを経て、今まで見えなかったことを発見したり、新しい知恵を生み出
したりするのです。

「う〜ん、聴くことは本当に難しいですね」
 オフサイトが始まり、少ししたら社長は笑いながら言いました。

「社員の意見を聴いているようでいながら、じつは『次、なんて言おう
 かな』って考えている自分がいるんですよ」

 そんな社長の言葉を受けて、社員も笑います。
「社長がそう考えているのがこっちもわかりますよ。だから、しゃべっ
 ている途中で自信がなくなってきちゃうんです」
「えー、俺が悪いのかー!」
「いや、お互いさまですけど」
「ハハハ」

 もともと社内のコミュニケーションはいい企業らしく、オフサイト的
な雰囲気にはすぐに馴染んだようでした。

■お客様は誰なのか?

 なにも目新しいことではありませんが、私は2つの問いを中心にして
議論することを提案しました。

「お客様は誰ですか?」
「お客様に提供している価値は何ですか?」

 このような「そもそも論」は、あらためて取り組んでみると意外に難
しいものです。お互いに聴き合い、意見をぶつけ合うオフサイトミーテ
ィングに馴染んだ彼らは腰をすえて議論を交わしましたが、なかなか
「これだ!」という答えにいきつきません。

 私はあらかじめ「あくまで経験則ですが、この手の議論には最低でも
20時間くらいはかかると覚悟してくださいね」と言っておきましたので、
それでも彼らはめげずに議論を重ねました。

 初日には約6時間。何度か、それらしい答えは出るのですが、彼らの
中で「今回は妥協しない。きれいごとでは続かない。売上が欲しいのだ
って本音なんだから、それも満たし、もともとやりたかったお店の姿も
見えるまで議論しよう」ということで、安易に結論づけずに終了しました。

 2度目は約8時間。それでも決着せずに、3度目のオフサイトに突入。
3度目が始まり、およそ4時間後、ついに彼らは自分たちなりの答えに
たどり着きました。

「ぼくらの提供価値は『安心感』。中古だからこそ、安心感を提供した
 いじゃないか。いろんなキーワードが出たけど、これがいちばん納得
 できる」
「その『安心感』を、ぼくらは誰に提供しているのだろう」
「それは、わたしたちが『おもちゃを持っている方たち』でしょう。中古
 にとって買取は生命線なので、“持っている人”がお客様というのはし
 っくりきますね」

■そして・・・「プレイコーナー」は?

 およそ1カ月後―。

 この議論から導き出した「私たちのお客様は誰か」「私たちの提供価値
は何か」の定義に従いお店づくりをしているという彼らに、私は尋ねてみ
ました。

「もともと頭を悩ます原因となっていた『プレイコーナー』はどうなった
 のですか?」
「小さいままです!でも、いいんです。以前の私たちはプレイコーナーば
 かりを気にしすぎていました。『“おもちゃを持っている人”に“安心
 感”を提供したい』という目でお店を見まわすと、それにふさわしくな
 いところがたくさんありまして・・・。プレイコーナーも同じで、大き
 いか小さいかが問題なのではなく、安心かどうかが重要なんだと気づき
 まして。だから、スペースは小さいですが、周囲に置く商品などには配
 慮して、安心してお子さんを遊ばせてもらえるように工夫を凝らしてい
 ます。」

 顧客は誰か、提供価値は何かのような「そもそも論」はものごとを深く
考えさえ、目の前のことにとらわれずに思考の幅を拡げてくれます。また、
この2つの問いはただ単に社員のベクトルをそろえるだけでなく、社内の
ルールや社員の意識面という内向きの話に陥りがちな議論を外向け(顧客
向け)に変えてくれるという効果があるのです。

 「売上なのか、理想なのか」その二律背反で悩んでいたときとは打って
変わって、さわやかに話す社長は最後にこんな冗談もつけ加えて笑ってい
らっしゃいました。「ところで…。最低20時間と言いましたよね?ぼくら、
18時間しか議論してないですけど、いいんですかね?」

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第21号は、プロセスデザイナー岡村衡一郎がお届けいたします。
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━━ <編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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